このページでは、借地権買取の基本をはじめとして、借地権者から借地権を買い取る際の基本的な流れ、買取交渉を進める上で絶対に知っておくべき注意点などをご紹介します。
全く条件が同じ不動産はひとつも存在しません。
そのため、不動産取引では買い手と売り手、市場の動向や流行などによって、細かい手続きの流れや最適な金額交渉の進め方、そして取引額が変わってきます。
しかし、どの不動産取引も、「土地や家を買いたい人と売りたい人がいる」こと、「お互いが納得いくまで話し合う必要があること」は同じです。
借地権買取の問題は、「買いたい人と売りたい人」の他に、「売りたい人の土地を持っている地主」の強力な権利者がいます。
借地権買取をスムーズに進めるためには、地主の存在と権利を理解した上で交渉に臨まなければいけません。
もし、地主との交渉がうまくいかなければ、どれだけ良い条件で借地権者が借地権を売りたがっていても、取り引きは成立しませんよね。
借地権買取を成功させるために、必要な手続きの流れを見ていきましょう。
借地権買取は、通常の不動産取引に比べて非常に権利関係が複雑です。
地主の機嫌を損ねないように配慮しつつ交渉を行い、「買い手」「売り手」「地主」の三方良しの条件をまとめるためには、高い交渉能力と専門知識が求められます。
多くの場合、大手の不動産会社は短期間で交渉が済み、仲介手数料を取りやすい一般不動産の取引きや仲介をメインで行っているため、借地権買取の交渉は不慣れです。
有名な会社だからと安易に不動産会社を決めてしまうと、地主との交渉が決裂する場合がありますので、しっかりと考慮した上で判断しましょう。
「借地権の売却には地主の承諾が必須」と民法の第612条で決まっている以上、借地権買取手続きで重視すべきは地主から承諾を勝ち取るための交渉力です。
不動産会社を決める際は、借地権買取に強い不動産会社を選びましょう。
いくら借地権者が借地権を手放したいと考えていても、地主が同意しない限り契約は成立しません。
借地権の地主は、昔ながらの大地主もあれば、不動産会社や国である場合もあります。地主が会社や国であれば、ある程度ビジネスライクに話を進めることができるので交渉はスムーズです。
しかし、昔ながらの大地主で義理人情を大切にするタイプ、加えて土地は相続しただけで、不動産に関しては素人が相手なら、交渉は慎重に進めなければなりません。
最初に地主へ話を通さずに交渉を進めると、高い確率で揉めごとになるからです。もちろん、地主によっては土地を返して欲しい、借地権の更新をするつもりがない人もいます。
中には、地主の承諾なく査定をしただけでクレームが入ることもあるので、何を置いても地主に売却についての話があること、売却話が進めば地主も満足のいく提案ができることを伝える事前交渉からはじめましょう。
地主の意向を確かめたら、具体的な買取額を決めるために現地調査と査定を行います。
ただし、借地権は一般的な不動産に比べて権利関係が複雑な分、一般的な土地建物よりも買い手がつきづらく金額も安いです。
値付けの仕方や根拠について、きちんと地主に説明できない不動産会社を選んでしまうと、「金額が安すぎる」と地主が買い取りを嫌がる可能性もあります。
借地権買取に慣れていない業者の場合、適当などんぶり勘定で査定されてしまうリスクがあるので、ここでも借地権の取り扱いに詳しい不動産会社を見つけることが大切です。
査定が終われば、ようやく借地権買取手続きは折り返し地点で、ここからがとても重要です。通常、借地権の取引きでは、借地人が地主に対して「譲渡承諾料」を支払います。
地主側が積極的に借地権を手放したがっているケースを除くと、放っておけば安定した賃料が入ってくる借地権を手放す理由はありません。
そこで承諾料を支払って買い取りの同意を得るわけですが、承諾料の割り合いや金額に法的な決まりはありません。
条件交渉に失敗すると、「借地権を売って欲しいなら、取引額の50%を承諾料として払ってくれ」といわれる可能性もあります。
法外な譲渡承諾料を支払うことになれば、借地人は借地権を売っても損をしてしまうため、取り引きは振り出しに戻ってしまうでしょう。
ただし、不動産の立地や譲渡承諾料の交渉、どうしてこの金額で買い取りたいと申し出ているのかなど、複雑な点を一つひとつ解決して地主に納得してもらうのはかなり困難です。
素人では難易度が高すぎる問題ですので、交渉のプロである不動産会社の力を借りて細かい条件を詰めていきましょう。
無事に地主が買取条件に納得してくれれば、ここで揉めることはほとんどありません。
ただし、地主とは譲渡承諾書に新しい借地権契約書を交わし、売り手とは売買契約書を交わしたり重要事項の説明を行ったりと、専門知識の必要な手続きを行うことになります。
手間を取ると地主の気が変わってしまう可能性もあるので、スムーズに、かつ丁寧に借地権の引き渡しまで進めるのがポイントです。
もちろん、契約書の作成や登記などの細々とした手続きを全て自分で行うのは大変なので、ここでも不動産会社が活躍します。
トラブルを招かず円滑に取り引きを進めるためにも、注意しておきたいポイントをまとめました。
借地権買取では、地主の同意が最優先です。地主が買い取りを承諾してくれない限り、話を進めることはできません。
借地権取引の知識がない業者に任せた結果、業者の不手際で地主が怒ってしまい、交渉が難しいケースは多いです。
地主との交渉を第一に考えて、手続きを進めるようにしましょう。地主も人間ですので、一度トラブルになると今後の交渉は難しくなってしまいます。
どうしても地主側が譲渡承諾をしてくれない場合は、裁判所に「非借地訴訟」手続きを訴え出て無理やり承諾を得ることもできますが、あまりおすすめはできません。
底地ごとまとめて借地権を買い取らない限り、借地に家を建てたり、改築したり、住居として使われていた借地に賃貸物件を建てたりするためには、地主の許可が必要になります。
借地権を買い取った後も地主とうまく付き合っていく必要がありますので、絶対に地主抜きで交渉を進めないよう気をつけましょう。
借地権買取手続きにおいて、もっとも重要なのは地主です。ただし、地主とうまく交渉して借地権買取の承諾をしてもらうためには、高度な交渉力が必要になります。
借地権ごとに、性格も年齢も知識量も違う地主とうまく交渉できるのは、普段から借地権取引を扱っている、経験豊富な不動産会社のみです。専門知識と交渉力の両方を兼ね備えた不動産会社を見つけることが大切です。
不動産会社をよく調べずに交渉を任せる不動産会社を決め、トラブルが起きてから借地権買取に強い不動産会社を探すメリットはありません。じっくりと時間をかけ、信頼できる不動産会社を選びましょう。
借地権買取の交渉が無事に終わっても、住宅ローンの審査に落ちてしまえば交渉はイチからやり直しです。手続きに時間がかかればかかるほど、交渉決裂のリスクは増えていきます。
住宅ローンを利用する場合は、不動産会社に相談して無理のないローン金額を把握し、事前審査等も利用してローンがもらえるように準備してください。
ここからは、借地権買取の手続きを進めていく上で、どういった法的手続きが必要になるのか、また各種の手続きに必要な書類は何かを解説していきます。
借地権の無断譲渡は、民法の第612条によって禁止されている違法行為です。もし、地主に黙って借地人と交渉を進め、勝手に借地権を買い取った場合、地主は新しい借地権者を一方的に追い出すこともできます。
借地人がお金を払ってそこに住んでいようと、借地権のある土地はあくまでも地主の所有物です。土地の利用方法や契約内容を決める権利を持つのは地主なので、借地権買取を行う場合は地主から「譲渡承諾」を得なければなりません。
法的には口約束も契約の内ですが、譲渡承諾をもらう場合は必ず「譲渡承諾書」をつくりましょう。口約束で借地権の買い取りについて認めていたとしても、後から地主の気が変わり「売るとはいってない」といわれてしまえば、お手上げですよね。
非借地訴訟手続きを行って無理やり譲渡承諾をもぎ取ることもできますが、地主とのトラブルに司法を介入させるのは最終手段です。
借地権を買い取った後、新しい借地権者として地主と付き合っていかなければならないことを考えれば、最終手段は最後まで取っておきましょう。
一応、譲渡承諾書等は通常借地権を売りたい借地権者側が用意するものですが、買い手と売り手が決まっていて、地主を説得したい場合は買い手側が譲渡承諾書等をつくっても問題ありません。
大事なのは、地主が納得する形で条件を詰め、誰が見ても文句のつけようがない書面にすることです。
譲渡承諾書をつくっておけば、いざトラブルになったときも対処できます。ただし、契約書の形式や条件闘争などを素人が行うのは難しいので、交渉は借地権買取のプロに任せましょう。契約書のテンプレートも使用できますし、契約書作成時の不備も防ぐことができます。
なお、買い取った借地権をそのまま使うのではなく、住宅ローンを借りて大規模なリフォームや建て替えたりする場合、建て替えやローンの利用に関する承諾も地主から得ていなければなりません。
後から交渉すると地主に断られてしまう可能性があるので、譲渡承諾書をつくる際にまとめて必要な承諾や承諾書類をつくっておきましょう。
借地権を買い取ることは、自分が新しい借地人になります。借地権はあくまでも「土地の利用権」なので、トラブルを防ぐために地主から土地をいくらで貸してもらうのか、何年貸してもらうのかなどを法的に拘束力のある書面に残しておきましょう。
借地権の建て替えやリフォームをする場合、借地人は地主の許可を取らなければなりません。どの程度のリフォームなら許可がいるのか、トラブルが起きたときはどうやって解決するのか、借地権を手放す場合は更地にするのかなど、将来のことを見越して各条件を詰めましょう。
借地権を買い取っても、建物の登記をするか、借地権契約をきっちり結ぶまでは借地権を保証するものがありません。
法的に借地権を確定させるため(一方的に追い出されないため)にも、借地権取り引きが終わったら、できるだけ早く建物の登記変更を行うのがおすすめです。
登記の手続きは、最寄りの法務局で行います。新築の場合は登記の登録、既存の建物を利用する場合は登記の変更手続きを行うので、
などを用意しておきましょう。
とはいえ、登記の手続きにミスがあったり、手間を取ったりするとやり直しが必要です。
確実に一度で手続きを終えたいなら、司法書士や弁護士を頼ることをおすすめします。
司法書士や弁護士の心当たりがない場合は、ここまで頼ってきた不動産会社に紹介してもらいましょう。