このページでは、借地権売却の大まかな流れや仲介業者と買取業者の違い、トラブル予防のために知っておきたい借地権売却の注意点、良い業者を選ぶポイントなどをご紹介します。
「自分の土地に立てた自分の家を売る」もしくは「自分の土地を売る」という一般的な不動産売却の場合、不動産会社を探して査定をしてもらい、買い手を見つければ売却手続きは終わりです。
しかし、借地権売却は「第三者の持っている土地を借りて自己所有の建物を建てるための権利を売る」という手続きとなります。
地主が売却に反対すると売却そのものが難しくなってしまいますし、そもそも権利関係が複雑な不動産というのは、売りに出しても「欲しい」と考える人が少ないため、そう簡単には売れません。一般的な売却よりも、慎重に手続きを進めなければならないのです。
注意点等は後で解説していきますが、借地権売却の流れを考える上で一番重要なのは、「絶対に地主との交渉が必要になる」という点です。
借地権には「旧法」と呼ばれる借地法と、平成4年8月1日に新たに施行された「新法」と呼ばれる借地借家法が存在します。
平成4年8月1日以降に契約をしたものは新法が、それ以前に契約したものには旧法が適用されます。
借地権を売却する前には、自身が結んでいる契約が新法と旧法どちらなのかを確認する必要があります。
なぜ、新法と旧法のどちらで契約しているのかを確認する必要があるかというと、2つ間では適用される法律が異なり、賃借人(土地を借りている人)の権利の強さが大きく変わってくるためです。
旧法の場合、契約の更新を続けることで半永久的に借地権を得ることができ、さらに容易に立ち退きなどの勧告もすることができないため、賃借人の権利が非常に強く、「一度貸すと土地が戻ってこない借地」と呼ばれています。
対して新法の場合、契約期間が明確に定められており、更新条件も明確化されました。そのため賃貸人(地主)の権利が強くなったといえます。
また、契約満了時の対応も変わってくるため、自分がどちらで契約しているのかを確認しましょう。
新法 | 旧法 | |
---|---|---|
契約期間 | 一般定期借地権:50年以上 建物譲渡特約付借地権:30年以上 |
堅固建物(木造など):30年以上 非堅固建物(鉄骨造など):20年以上 |
契約更新 | なし | あり |
契約満了時 | 定期借地権契約をしている場合は買取請求不可 | 買取請求が可能 |
ここからは、実際どういうふうに借地権売却の手続きを進めていくのか見ていきましょう。
不動産売買では、取引を成立させるために「重要事項説明書」や「売買契約書」、登記の書き換えなど、様々な書類をつくって事務作業をしなければなりません。
個人で不動産売買をするのは非常に難しいので、借地権売却をするときは土地売却のプロである不動産会社を頼りましょう。
個人間で不動産のような大きな資産を取引する場合、費用の不払いや契約の不備といったトラブルのリスクも考える必要があります。
もし、借地を管理している不動産会社がいるのであれば、まずはそちらへ相談してみるのがおすすめです。
相談や査定なら無料の場合が多いので、地元の評判やネット上のレビューなどを参考に、何箇所か実際に足を運んで営業マンの話を聞いてみましょう。
不動産がいくらで売れるのかは、不動産会社の人が現地調査と査定をして提案してくれます。
細かい情報がわからない家、汚れている家などは高値をつけることができないので、なるべく家を買ったときにもらっているはずの設計図や重要事項説明書、契約書などを用意しておきましょう。資料が揃っていると、その分査定がスムーズに進みます。
ちなみに、不動産の価値を一番大きく左右するのは立地です。駅から近い、スーパーなど生活に便利な施設が多い、地域で人気のエリアなど、好立地であればあるほど欲しい思う人が多いため、査定額も高くなる傾向があります。
不動産会社が提示する査定額に納得できたら、正式に契約書を交わして借地権売買契約を結びましょう。
不動産の売り手と不動産会社が交わす契約は、媒介契約といって、以下の3種類があります。
一般媒介(複数社と同時に契約できる。自分で買い手を探しても良い)
専任媒介(一社とのみ契約。自分で買い手を探しても良い)
専属専任媒介(一社とのみ契約。自分で買い手を探してはいけない)
一度専任媒介や専属専任媒介契約を結ぶと3ヶ月は簡単に不動産業者を変えることができません。法律の規定上、媒介契約は3ヶ月ごとの更新制となっているためです。
一方、専任媒介や専属専任媒介は、不動産会社が宣伝広告や仲介活動を独占できる分サービスが手厚いです。「レインズ」と呼ばれる全国規模の不動産ネットワークに物件情報を登録できるので、買い手が見つかる可能性も高くなります。
どの契約にもメリット・デメリットがあるため、自身の希望や不動産の条件に応じて決めましょう。
借地権売却でもっとも難しいのは、地主との交渉です。基本的に、借地は自分のものではないため地主の承認なしで勝手に売ることができません。地主と自分が交わしている契約内容が変わってしまうからです。
地主が不動産の売却を認めてくれれば、買い手を探して価格交渉をするだけで良いのですが、交渉の仕方によっては高額な承認費用を請求される場合もあります。
地主と昔からの知り合いで、和やかに交渉する自信があるという人以外は、不動産会社を挟んで交渉したほうが良いでしょう。
なお、地主との交渉では単に売却を認めてくれるかどうかだけでなく、建て替えは可能なのか、地主と買い手との間で改めて結ぶ土地の借地権に関する契約はどうするのかなども決めていきます。地主が頷くような、総合的な条件交渉が必要です。
借地権を売却する際は、地主との話し合いや条件の設定をしっかり行うことでトラブルを回避できます。地主と借地権売買条件を設定する際は、次のポイントをしっかり押さえておきましょう。
まずは借地権を売却・譲渡する上で守るべき条件を地主と話し合い、調整が必要です。借地権の所有者が第三者に借地権を売却する際は、地主さんに「譲渡承諾料」を支払う必要があるからです。これは名義書換料とも呼ばれることがあります。
譲渡承諾料は「借地権価格」の10%程度が目安ですが、地主としっかり話し合うことで譲渡承諾料は低めに設定されることもあり、逆に話し合いがおざなりだったり地主との関係性によっては高めに設定されてしまうこともあります。
まずは借地権の売却を地主に承諾申請をし、そこで地主から承諾を得てからようやく承諾料の支払いという流れになります。承諾申請をしたり承諾料の交渉をしたりする際は、時間がかかる面もあるので個人で行うよりも不動産会社に仲介して貰った方が安全です。
譲渡の承諾を申請する際には、一緒に抵当権の設定や借地契約の条件についての打ち合わせもします。
借地権を売却するにあたって、借地上にある建物が古くて全く使い物にならない、買主への売却が上手くいかないという場合には、建物を建て替えるために承諾を得ることも必要です。建て替え承諾を申請した際にも譲渡承諾の申請と同様、承諾料を地主に支払うことが必要となります。
建て替え承諾料の目安は、更地の価格の3%程度が目安とされています。ただし非堅固建物を堅固建物に建て替えるような場合などは、借地権の条件を変更することになります。そのため条件変更に伴うまた別の承諾料を支払う必要もあるのです。
建て替えを行う場合にはどんな建物に建て替えるのかが、地主との条件交渉を大きく左右します。借地権の売却主の独断ではなく、地主や買主、不動産会社のプロとよく相談して建て替えについて検討しましょう。
根本的な問題になりますが、借地権を売却しようと考えているなら、支払義務のある地代や更新料を地主にきっちり支払っておく必要があります。もしもこれまでに地代・更新料の滞納が合った場合には、それらを清算しない限りは借地権を売却することはできません。
借地権を売却する際は地代や更新料の滞納がなかったか、支払の面で地主とトラブルを起こしたことがなかったかを振り返って確認しておきましょう。支払トラブルが原因で地主との関係性が悪くなっていた場合も同様、借地権の売却にリスクを生んでしまいます。
借地権を売却する際は、地主だけではなく新たな借地人(買主)とも条件を設定し、お互いに納得する必要があります。新借地人との条件として確認しておくべきなのは、地代の取り決めやローンの承諾の可否、それから借地期間といった、借地権を受け渡す際の基本的な条件です。
地主との交渉にかかりっきりになるあまり、新借地人との条件決めがおざなりになることがないように注意しておきたいですね。また、新借地人との条件設定の際には地主の意思を尊重することも大切になります。
借地期間の設定は新借地人や現借地人だけではなく、地主の都合も考えて設定しないといけないため少々難航しがちです。借地としての収入を得続けたい地主であれば借地期間の設定もスムーズに進みますが、地主が借地契約を早く終わらせたいと考えている場合には、借地期間が短めに設定されてしまいます。
地主の意思と現借地人の意思が食い違っていた場合は、借地期間の設定条件がかなりブレやすくなります。地主の意思を無視しようとすれば関係性は悪化し、譲渡承諾申請を受け入れてもらえなくなる可能性だって出てきます。両者の妥協点を探したり、交渉を重ねたりするのは決して簡単ではありませんから、個人で行おうとせずにプロに仲介してもらった方が安全に事を運びやすいと心得ましょう。
地主と新借地人、そして借地権を売却したい目的を明らかにした上で、よく考えながら条件決めをしていくのがベストです。
地代の取り決めでトラブルになるケースは多く見られます。地主は借地人が変わるのをきっかけに地代の増額を要求してきたり、更新時期や売買などを節目として地代改訂を言い出したりする可能性があるからです。
もちろん地代が高くなれば借地権の売却は上手くいきません。地主としっかり交渉しながら、地主・現借地人・新借地人の折り合いをつけることが大切です。借地権に精通したプロの意見を取り入れる他、交渉を仲介してもらうことで、穏便に地代の取り決めを進められます。
借地権の売却がきっかけで起きる地代改訂により、トラブルが起きる可能性は高いです。土地を借りる際の地代は、原則として当事者間の自由。建物を借りる際の家賃よりも、土地を借りる際の地代の方が圧倒的にトラブルのリスクが高いのが特徴です。
土地の賃借になると、地主と借地権者の間だけで契約が交わされるため、地代の水準や目安がオープンになりにくいのが現状。そのため地代を高めに設定される可能性があるのです。
地代改訂を行う際は、土地の鑑定を行ったり第三者に間に入ってもらったりすることでトラブルを回避しやすくなります。
新借地人の多くは、ローンを利用します。しかしローン承諾は地主の一存ではねのけることもできるため、借地権を売却する際は必ず地主にローン承諾の可否を確認する必要があります。
もしも地主がローン承諾をしないまま借地権の売買契約をしてしまうと、ローンが利用できないことが理由で契約が解除になってしまう可能性も考えられます。
コーヒーカップはカップとソーサーがセットになって初めて価値が生まれます。ソーサーだけでは価値が下がります。これを「コーヒーカップ理論」と言い、借地権売却の面でも多々使われる理論として知られています。
借地権は権利として独立していますが、土地を利用するには地代を支払ったり、更新料を支払ったりといったコストがかかります。そのため借地権単体で売却しようとすると、安めの価格で売却されがちなのです。
ところが借地権に合わせて底地権も一緒に売却すると、一気に価格は高くなります。底地も借地権も一緒に手に入れば更新料などのコストが不要ですし、建て替えや売却もやりやすくなります。借地権と地底権の関係はまさに、コーヒーカップ理論と酷似しています。
ただし借地権と地底権を一緒に売却する場合には、地主が同じタイミングで売却に同意している必要があります。借地契約の更新や相続のタイミングでチャンスが訪れることが多くあります。
もしも地主から借地権売却の承諾が得られなかった場合は、借地非訴裁判を行って譲渡承諾の代わりになる許可を得ることで、借地権を売却することができます。このケースになると弁護士をはじめとする専門家に依頼しなければいけません。必要コストがかさむ上、借地権の売却までにかかる期間も長引いてしまいます。また、裁判を起こすことで地主との関係性が悪くなってしまう可能性もあり、その場合は思うような価格で借地権を売却できないことも考えられます。地主との関係性にヒビを入れないためにも、裁判は避けて穏便に譲渡承諾を申請しましょう。
地主の承諾を得たら、不動産会社を通じて借地権つきの家を売りに出します。契約の種類にもよりますが、基本的に集客や内覧の案内などは不動産会社が主導してくれるので、値引き交渉に対応する以外では売り手がすることはあまりありません。
無事、買い手が決まったら売買契約書や借地権の契約書などをつくり、借地権売買を成立させます。借地権契約を書き換え、抵当権がついていたら抵当権を外し、晴れて物件の引き渡しです。
借地権売却は、地主という完全な第三者の存在が絡んでくる分、通常の不動産売却よりも慎重に手続きを進めなければなりません。
借地権売却に関する基本的な知識を知らなかったり、頼りにならない不動産会社を選んだりしてしまうと、想像している以上に面倒なトラブルへ発展してしまうでしょう。
地主とトラブルになると、最悪の場合は借地権の消失も十分ありえます。お金と権利関係の絡んだトラブルは、一度こじれると感情的な対立にも発展しやすいため、何よりもトラブルにならないように上手く立ち回ることが重要です。
借地権売却をトラブルなく進めていくために、知っておくべきポイントをまとめました。
借地権売却をする場合、まずは地主へ売却の話を持っていきましょう。なんといっても、借地の持ち主である地主を除け者にして売却話を進めることはできません。
最初に「不動産を売りたい」と地主に話を通しておかないと、法律的にも感情的にも後からこじれます。
なにより、地主が家を買い戻してくれれば、権利関係の交渉もある程度サクサクと進めることができますし、買い手を探し回らなくて良いので楽です。逆に、交渉の結果地主から借地を買い取ることができれば、土地建物をセットで売れるので売却額も高くなるでしょう。
地主が銀行や投資家ではなく、個人の場合はとりわけ慎重に交渉すべきです。個人個人で不動産や借地権に対する理解度も違いますし、合理的な説明で納得してくれる人、義理人情を通したほうが納得してくれる人など、交渉のタイプも変わってきます。
相手の性格や知識のレベルに合わせて、どうしてこの査定額なのか、売却を承諾するとどうお得なのかを説明できるように準備していないと、交渉は上手くいきません。
契約相手がずっと変わらず、安定した賃借料が手に入るというのが地主にとってある意味理想的な状態です。
道路開発等で高額の売却話を持ちかけられているわけでもない限り、地主には借地の売却を認めるメリットがありません。そのため、「名義書換料」や「承諾料」などのお礼金を払うことで、借地の売却や借地権の譲渡を認めてもらう必要があります。
金額の相場は、借地利用価格の10%前後。ただ、地主の考えや交渉によって金額は変わってきますし、借地に抵当権がついている場合は抵当権の解除費用も必要です。
交渉に失敗すれば、「800万円で売った不動産の承諾料として、500万円支払うことになった」という状況もありえるでしょう。
もし、地主がどうしても交渉に乗ってくれない場合は、「借地非訟手続き」を裁判所に申し立て、借地権の譲渡を認めてもらうことも可能です。
借地非訟手続をしても承諾料は支払う必要があるので、借地権売却では「地主を納得させるためにお金がかかる」ということを覚えておきましょう。
借地権とは、「地主と契約した本人だけがその土地に家を建てて良い権利」です。地主と契約者がお互い納得して取り交わす契約なので、家を売りたいからといって自分の都合で勝手に借地権を他人へ譲渡してはいけません。
「借地の利用料として支払う金額は変わらないなら問題ないだろう」と地主に話を通さず家を売ったり、「身内だから問題ないだろう」と子ども名義で家を建て替えてもらったりするのは違法なのです。
借地権を誰かへあげても逮捕されるわけではありませんが、地主からの心象はほぼ間違いなく悪くなります。
借地権の無断譲渡は、簡単にいうと「誰かから借りた物を、勝手に他人へ又貸しする」ことと同じです。
怒った地主が、無断譲渡の取り消しやそもそもの借地権取り消しのために裁判を起こしてから弁解をしにいっても、解決できるとは限りません。無断譲渡にならないよう、物件の扱いにはくれぐれも注意しましょう。
一口に「借地権」と言っても、実は様々な借地権があるのをご存知でしょうか。
その中でしばしば混同されるのが「土地賃借権」と「地上権」です。
土地賃借権と地上権は、一見どちらも似たような制度。しかし、実際には大きな違いがあります。
土地賃借権とは、土地の貸主・借主の間の関係です。そのため、建て替え等の場合には賃貸人の許可が必要になります。土地に関してはあくまでも「借り物」なので、土地利用の権利を持っているだけにすぎません。
一方、地上権は「物権」とも呼ばれており、地主に対して登記を請求できます。また、建て替えの際の承諾が不要です。地上権の方が強い権利を持っていることになると言えるでしょう。
また、地上権の場合、借地権の所有者が地上権を希望すると、地主には登記に応じなければならない義務があります。土地賃借権に関しては、地主には義務は生じません。
地上権を持っていれば、地主の承諾なしでも売却や改築も可能です。
つまり、賃借権はあるものの地上権を持っていない場合、リフォームや改築でさえも地主の許可を得なければなりません。
ただし、契約内容によっては、土地返却の際に更地にする必要がある点には気を付けておきましょう。
このように、特徴を述べていくと地上権の方が圧倒的に良さそうですよね?
しかし、これは土地の上の部分のみの話。実際には地上権が設定されていない土地の方が圧倒的に多いのです。
地上権はあくまでも「土地の上の物」に対しては賃借権よりも強い権利を持っていますが、土地の上のものを借りて住むという点では同じです。
そのため、土地賃借権で十分と判断している人も多いようです。
現実的に地上権が意味を発揮するのは、土地の上の建物の「さらにその上」が考えられるケース。
例えば家の上に高速道路や鉄道などが建設される時などです。
地上権を持っていれば、「土地の上」のものについては修繕、売却等は地主の許可を取る必要がありません。そのため、鉄道会社等がインフラ整備をする際、わざわざ地主の許可を取ることなく行えます。そのような時に地上権が設定されるのです。
第三者が勝手に借地権を売却することをふせぐために地主が行使できる「介入権」。
借地権の買取において地主が最優先になるよう定められた制度です。
借地権にはもともと「相場価格」と言えるものはありません。場合によっては地主が考えていたよりも断然低い額で借地権を譲渡してしまうシチュエーションも考えられるのですう。また、悪意のある第三者に借地権が渡されてしまうケースも充分に考えられます。
しかし、介入権があればそのような「第三者への譲渡」のリスクを下げられます。
これは民法612条1項にて明記されている条項。もしも地主に無断で借地権が譲渡された場合、借地契約を解除することができるのです。
借主側からすると、借地権を譲渡したい時には地主と交渉し、承諾をもらっておかなければなりません。その際には譲渡承諾料を支払うことが一般的です。
介入権は決してローカルルールではなく、法律によって定められているものです。
そのため、守るのは当然ですし、もしもそこで違反等があれば裁判にも発展します。また、裁判に発展したとしても、判例等が揃っている以上、介入権を持っている地主側に有利になるという点は覚えておいた方が良いでしょう。
介入権についてよく分からないのであれば、弁護士に相談してみると良いでしょう。
弁護士は法律のプロです。法律のエキスパートである弁護士であれば、法律に関する様々なことに答えてくれます。
介入権に関しても、これだけではまだまだよく分からないという人も多いのではないでしょうか。
また、実際に言葉として説明されても、当事者になってみないと分からないこともあります。
介入権に関する複雑な問題では、自分自身の勝手な判断で正誤を見誤ってしまう人も多いので、少しでも気になることがあるなら弁護士に相談した方がいいでしょう。
ただし、弁護士に関しても得手不得手があります。そのため、借地権や地上権に詳しい弁護士を探して相談することをおすすめします。
弁護士はそれまでにどのような案件をこなしてきたのかによって見識が異なりますので、「誰でも良いから弁護士を」ではなく、借地権や介入権など、土地関係に強い弁護士を探して相談すべき。
介入権を始めとする不動産問題を得意とする弁護士なら、権利のやり取りに関しても詳しくレクチャーしてくれます。あなたの不利になるような事態を可能な限り避けてくれるでしょう。
もし、「弁護士に依頼するほど差し迫った状況ではないが、介入権について気になる点がある」という方は、法制度にきちんとした知識を持つ不動産業者に相談してみては。
いずれにせよ、安易な自己判断を避けて、ノウハウ・実績のある専門家へ依頼するのがベストです。
同じような「○○不動産」という看板を掲げていても、じつは不動産会社によって得意分野は違います。
料理人という括りに入っているからといって、「和食の職人」に「フレンチのフルコース」を頼むようなことはしないでしょう。借地権売却の相談をするなら、借地権売却が得意な不動産業者を選ぶ必要があります。
マンションの売買や賃貸、一戸建ての建築などさまざまな分野がある中で、借地権売却を得意とするのは「仲介業者」と「買取業者」です。どれだけ良い不動産会社であっても、「マンションの賃貸と管理」が得意な会社に借地権売却を持ちかけても上手くはいきません。
仲介業者と買取業者の違いを押さえましょう。
一般的な不動産会社をイメージしてみてください。
それが、不動産仲介業者です。一軒家やマンション、アパート、土地などさまざまな不動産を扱っており、家が欲しい人と売りたい人、マンションを借りたい人と貸したい人の間を取り持つ代わりに、「仲介手数料」を取って儲けを出しています。
借地権そのものを売買していることは稀で、借地権を売りたい人と買いたい人の仲介に入ってくれます。地主が譲渡を認めていない場合には、取り扱えない可能性もあるので注意が必要です。
買取業者とは、自分たちのお金で不動産を買い取って転売したり、建物を建てて売却したりすることで買値と売り値の差額を出して儲けている不動産業者です。
借地権の直接買取も行なっているため、買いたい人を探す手間がはぶけます。
借地権売却の前段階である、地主との交渉も行なってくれるので、売却を決めた段階で相談してみるのも良いでしょう。所属している人たちは専門知識に長けているためスムーズなやり取りが可能です。
よほど好条件で不動産を売りに出せる人以外は、買取業者の利用をおすすめします。
一般的に、借地権のついた不動産は権利関係が面倒なので、市場に出してもあまり買い手がつきません。仲介は売買を成立させることで手数料を取る商売なので、取引に時間のかかる借地権売却が苦手なのです。
その点、買取業者なら自己資金で不動産を買い上げることができるため、比較的短期間で借地権売却を終わらせることができます。
また、借地権の扱いに慣れている買取業者なら、借地権ならではの事情を考慮した査定ができますし、地主との交渉も信頼して任せられるでしょう。
借地権の売却をと考えた時、参考になるのはやはり「相場」なのではないでしょうか。
相場を知ることで、大まかにではありますが損得も見えてきます。
借地権に限らず、お金を出す、あるいは買取ってもらう時には相場を知ることで、良い話なのかそうではないのかが見えてきます。
借地権を売却する際にも相場をと考えるのもよく分かる話なのですが、実は借地権には相場がありません。
借地権に相場がない理由はいくつか考えられます。
まず、借地権の売買は賃貸人の許可が必要なもので、お金を出せばよいものではありません。
中には「いくらお金を出されても譲らない」という人もいます。そのため、相場が把握しにくいです。
賃貸人の気持ち次第になりますので、熱意をもっている相手であれば高く売却してもらえる可能性もあれば、逆にとにかく買い叩こうとする人もいるでしょう。
つまり、借地権を売却する際の判断材料は「自分の気持ち」になってしまいます。
借地権には相場がありませんので、さらにいくらで売れるのかよく分からないと思ってしまった方もいるかもしれませんが、一応目安となる計算式があります。
自用地としての評価額-(自用地としての評価額×借地権割合)=借地権売却金額
です。
自用地とは更地の状態の土地です。まっさらで何もない状態での価値から、計算によってある程度の割合が出ます。
もしもですが、1,000万円との評価を受け、借地権のwあり合いが6対4の場合、先の公式に当てはめると借地権の売却額が見えてきます。
1,000万円-(1,000万円×60%)=400万円。
これが目安になります。
但し、これはあくまでも土地代であって、建物の料金は含まれていません。建物に関しては建築年数によっても変わってきますが、一般的に不動産業界では築年数が20年を超えると住宅としての価値がゼロとなります。決して20年で住めなくなるという意味ではなく、木造住宅の「税法上」における耐用年数が22年なので、そこから算出された数字となっています。
先に出した数字はあくまでも「目安」であって、決して絶対的なものではありません。
評価額の公式として出されたものであって、借地権を売却する際の一つの目安になるとしても、必ずしも評価額を満たしているのかを考える必要性はありません。
売却する際のタイミングや自分の気持ちを元に判断しましょう。
不動産には、一戸建て・マンション・土地といったものがあります。その中でも所有権と借地権、各分野で分かれているので、会社ごとに強みが違います。
借地権売却が得意な買取業者、というレベルまで絞り込んだほうが、希望に合った業者を見つけやすいですよ。
ここでは借地権売却を有利に進めるための良い不動産会社を選ぶ4つのポイントをご紹介します。
不動産業界は、「契約を取ってナンボ」の世界です。個人のノルマや店舗の売上を上げるために、メリットばかりを見せて契約を迫ってくる営業マンも少なくありません。
また、質の良くない営業マンは、「いまだけ」「この機会を逃すと」など、契約の承諾を急かすことが多いです。
顧客重視の営業をしている不動産会社なら、提案はしても急かしてきませんし、デメリットやリスクも細かく説明してくれます。
質問や問い合わせへの返答をすぐ対応してくれる、打ち合わせに必要な資料の準備が速い、時間をきっちり守るなど、スピード感のある営業マンがいる会社を選びましょう。
何かにつけて対応が遅い営業マンがいる会社は、営業マンが未熟で頼りにならないか、一人あたりの担当顧客数が多すぎて丁寧なケアができなくなっている可能性があります。
借地権売却では、全国規模で展開している不動産業者や、誰もが一度は名前を聞いたことのある大手不動産業者を頼るのはなるべく避けましょう。
大手の不動産会社というのは宣伝広告にお金をかけているため、家や土地の売買、賃貸契約など一般的な取引を扱うことが多いです。
大手であればあるほど、いざ契約して任せても、なかなか買い手を見つけることができなかったり、地主との交渉を失敗したりしてしまう可能性があります。
不動産会社は、知名度ではなく対応の丁寧さや専門性、つまり実際に相談してみてから決めることをおすすめします。
借地権売却は、プロでも難しい取引です。専門知識と実績を持っている相手でないと、信頼して任せることはできません。
少なくとも、底地権(地主が持っている土地の所有権そのもの)と借地権(地主が底地権を持っている土地に家を建てて良いという権利)の違いを知らない業者では話にならないでしょう。
できれば、借地権売却を専門的に取り扱っている買取業者、しかも取引例などの実績を見せてくれる業者がおすすめです。
HPなどで探す場合、どんな不動産を取り扱っているかでその会社の強みが分かります。そこに借地や底地といった文言があれば、専門に扱っていることがわかりますよ。
ここからは、借地権を実際に売却するまでにはどのような法的手続きが必要になるのかを解説していきます。
何度も繰り返し出てくる話題ですが、借地権は持ち主である地主に黙って売ってはいけません。
その根拠は、民法の第612条にある、「他人から借りているものを、勝手に売ったり又貸ししたりしてはならない」というルールです。
もし、借地人が地主になにもいわず勝手に借地権を第三者に売却した場合、地主は借地権契約を一方的に解除できます。
借地権の無断売却は間違いなくトラブルにつながるので、絶対に避けなければなりません。
そこで必要になるのが、地主の「譲渡承諾」です。一般的には地主と交渉して、借地権売却額の一部(10%前後が相場)を譲渡承諾料として支払う代わりに、借地権の売却を認めてもらいます。
ただ、口約束では「承諾なんてしていない」といったトラブルになりやすいので、話がまとまったら「譲渡承諾書」という契約書を地主と借地人で交わしましょう。
地主は借地権の譲渡について承諾すること、借地人は一定の譲渡承諾料を支払うことを法的拘束力のある書面にすることでトラブルを防ぎます。
一方にだけ有利な内容であったり日付や同意者の署名捺印等がなかったりすると、訴訟などになった際に効果を発揮できなくなりますので、譲渡承諾書の内容はきちんとチェックしましょう。
譲渡承諾書の作成に必要なのは、地主と借地人の合意だけです。しかし、大きな金銭の絡む話だけに、直接本人同士がやり取りをすると高い確率でもめてしまいます。
できれば、地主との交渉から交渉上手な不動産会社を頼るのがおすすめです。
借地権を売却するためには、市場に出せばいくらくらいで売れるのかを査定する必要があります。
大雑把な相場はともかく、物件ごとの細かい売り出し価格を決めるためにはプロに査定してもらわなければなりません。
譲渡承諾の交渉を任せた不動産会社や、借地権売却の仲介をしてほしい不動産会社に査定をしてもらいましょう。なお、多くの場合だと相談や査定までは不動産会社が無料でやってくれます。
とくに書類を準備していなくても査定は依頼できますが、査定額を少しでも上げるために、以下の書類を用意しておきましょう。
検査済証があれば、家を建てた時点での建築基準法をクリアしていたことがわかります。その他、リフォームや耐震改修等で住宅の機能が改善しているならそれを証明できる書類も効果的です。
建築基準法を守っているか不明、きちんと管理補修されているかわからない、いつ購入したものかがわからない家は、立地や状態が良くても高くは売れません。
借地権を個人で第三者に売却するのは難しいので、売却手続きを進めるためには不動産会社に物件の査定や宣伝広告、買い手との交渉といった仲介作業をしてもらう必要があります。
不動産会社に物件のことを任せる場合に交わすのが、「媒介契約」です。
媒介契約の種類や、どの土地にあるどういう物件の売却を手助けしてもらうのか、報告義務はどの程度なのか、契約期間はいつまでか、といった細かい契約内容はすべて契約書で決めていきます。
契約書を交わさない限り、不動産会社と正式に契約したことにはなりません。
契約書なしの口約束やメールで契約を決めることはまずありませんが、万が一のこともあるので契約書の作成は忘れないようにしましょう。
とくに気をつけたいのが、仲介手数料とどこまでを業務としてやってくれるのかという部分です。不動産会社が請求できる仲介手数料は法律によって上限が決められていますが、細かい割合は会社によって違います。
借地権がいくらで売れるのか、借地権をより高く売るためのリフォームにいくらかけるのかなどによって手数料の負担が変わるので、最終的に赤字にならないよう手数料の金額に注意しておきましょう。
なお、契約時は本人確認書類が必要です。本人の署名だけでも契約はできますが、多くの場合は捺印を求められるので印鑑を使いましょう。実印を使う場合は印鑑証明書なども用意しておくと良いでしょう。
また、媒介契約書を交わしたら、本格的に広告をつくって借地権の売出しをしていきます。
チラシや宣伝をつくるのに役立つ家の間取り図や、ローンの残高がわかる書類、固定資産税の税額がわかる書類などもあると便利ですね。
買い手が決まったら、売り手である借地人と買い手との間で売買契約書を交わしましょう。
どこの物件をいくらで売るのか、支払いはいつまでに行うのか、売却後に物件に何か問題が起きた場合の責任はどちらが負うのか、といった内容を決める書類であり、契約です。
など、必要書類が多いので事前に準備しておきましょう。
地主に借地権を買い戻してもらったり、第三者に借地権も底地もまとめて売却したりしない限り、次の借地人と地主との間で改めて借地権契約をしてもらう必要があります。
契約自体は買い手と地主が行うので、借地人がすることはありません。
ただ、事前に建て替えの許可やローンの利用ができるかどうかという点で地主と合意ができていないと、ここでトラブルになってしまいます。
譲渡承諾を取るときに建て替えやローンの承諾も取っておき、別途書面に残しておくと良いでしょう。
不動産を売買したら、最寄りの法務局で登記を変更します。売買の場合、借地権売却の支払い日と登記の書き換え日は同日です。
などを用意し、「所有権移転登記申請書」の必要事項を埋めて法務局に提出してください。
登記の変更にかかる費用は、売り手である借地人の負担になるケースが多いです。
記入ミスや必要書類の不足があると余計な手間がかかってしまいます。一回で確実に手続きが終わるよう、準備を調えてから臨みましょう。
契約書づくりやその前段階で必要になる交渉、借地権の査定に物件の宣伝広告など、実際に借地権を売却するためには非常に多くの能力が求められます。
とくに、法的な手続きに関しては融通がきかないので法律面の知識と実務能力が不可欠です。しかし、なにもかも自分で手続きをするのは現実的ではありません。
法的手続きや高度な交渉力が必要になる借地権売却では、頼りになる不動産会社を見つけ、必要に応じて弁護士事務所や司法書士事務所を利用しましょう。
できないことは素直にプロの手を借りるのが、もっとも負担もかからず、高額売却を狙いやすい解決策なのです。